花と音色と虹と

ラルクの音楽的な魅力を考えるブログ。

NEO UNIVERSEを考える① 〜曲の”未来感”はどこから?〜

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あけましておめでとうございます。2019年になっちゃいましたね。

最近では毎年、格付けチェックを観ることで1年の始まりを実感しています。

GACKTさんとYOSHIKIさんの無敗っぷりに口を半開きにしながらブログを書いていたら日付を跨いでしまいました。格付けよ恐るべし・・・。

 

さて、今回は年明けと共に聴きたくなる”初ラルク”にふさわしい曲を分析します。

1999年の大晦日に行われた『L'Arc〜en〜Ciel RESET>>LIVE *000』

年越しのカウントダウンが終わり、2000年になった瞬間にお披露目されたあの曲。

 

NEO UNIVERSE (通称:ネオユニ)

 

この曲はラルクのなかでも特に”未来”的なイメージがあります。

CGを駆使したMVには、重力を無視した設計の建物やロボット、空飛ぶ車などの未来っぽい要素が詰められています。

文明に彩られた都市を自由に飛び回るような浮遊感・高揚感を味わえる、21世紀の幕開けにふさわしい華やかな作品ですよね。

映像演出の至るところに散りばめられている未来都市。今回は映像ではなく音源に込められた”未来感”について考えていきたいと思います。

 

≪目次≫

 

宇宙っぽい音は使われていない!?

 

先ほどから「未来」を連呼している私ですが、ネオユニを聴き込む間にとんでもないことに気づいてしまいました。

 

曲の音色自体はそこまで未来っぽくないのです。

 

「ドラムにスネアが使われていない」「打ち込みの比率が高い」などポップス要素の強い楽曲ではありますが、実は1つ1つの音色はわりとアナログ感があります。

ピアノやアコースティックギターにストリングス。もちろん作曲ソフトで代用することも可能ですが、基本的には自然界で生まれた楽器をモデルにした音が使われています。

また、メロディー部分は基本的にボーカルと楽器隊が担当しているため、曲のイメージほどはピコピコしていません。

 

そして何より、未来感を出すために使われがちなコスミック系の音色が使われていないのです。

個人的に少し宇宙要素あるかな?と思ったのはBメロ部分で使われている高音のピコピコですが、この音も乾いた感じのシンセ音に少し手を加えることでかなりソレっぽく作れるのでそこまで宇宙!というイメージはありません。

(実は大学生のときに軽音サークルでネオユニを演奏したことがある←)

 

ネオユニの未来っぽさは音色とは別の部分にありそうです。

ちなみにラルクで宇宙っぽい音が使われているな〜と思ったのは『CHASE』ですかね。

 

未来感=音程の”不安定さ”!?

 

さて、NEO UNIVERSEという楽曲に込められた未来的なイメージはどこから生まれているのか。

まずはこの曲のメインになる音程について解説していきます。

 

NEO UNIVERSE嬰ヘ長調、コードに直すとF#です。

ピアノ経験のある人ならわかるかもしれませんが、この調はとんでもなく弾きづらく不安定なものです。

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ピアノで弾こうとすると、白鍵よりも圧倒的に黒鍵の方が多くてとんでもなく難しいです。

私自身、この調の曲を練習するときにあまりにもミスりすぎて、何度か譜面を床に投げつけたこともあります。(単にヘタなだけ)

ちなみにこの調、譜面に直すとこんな感じです。

 

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本来あるドレミの音(ハ長調)から半音上げる#(シャープ)が6つもあり、見ているだけで目が回りそうです。

ちなみに6つ目のシャープは『ミ』の位置についていますが、半音上げることで『ミ』から『ファ』になります。ややこしい!

 

ピアノでも弾きにくい、譜面に直してもややこしい。

ネオユニを形作る嬰ヘ長調の音程は、実に不安定なのです。

この不安定な音程が楽曲に浮世離れした印象をもたらし、”危うさ”や”未来感”に繋がっているのではないかと思っています。

 

ちなみに曲の音程を半音下げたらどうなるでしょう。

ラルクは近年、ライブ演奏の際にネオユニの調を嬰ヘ長調(F#)からへ長調(F)に下げていますよね。

 

正直、原曲キーに比べて地に足ついた感じがしませんか?

 

ラルクメンバーの演奏技術が向上し、曲に安定感が生まれていることは間違いありません。しかし、やはり半音下げることによってネオユニの持つ”危うさ”はかなり軽減されている気がします。

 

へ長調は譜面上では音程を半音下げる♭(フラット)が『シ』の位置に1つ付いているだけで、ピアノでも比較的弾きやすい調です。

もちろん、譜面のややこしさや演奏の難しさが必ずしも曲のイメージを左右するとは限りませんが、少なくともネオユニに関しては音程の持つ不安定さが曲の持つ危うさに繋がっているのではないかと思っています。

 

高温で歌い上げる6弦ベース

 

NEO UNIVERSEを音楽面から語るときに避けては通れないのがベース。

ラルクの超絶王子様ベーシスト・tetsuyaさんがネオユニを演奏する際、いつも同じベースを使っていることに気づいている方は少なくないでしょう。 

実はあれ、6弦である上にチューニングが本来の6弦ベースと大きく異なる「ネオユニ仕様」のベースなのです。

(ちょっと説明しづらいので6弦ベースのチューニングとギターのチューニングをググって頂けたらめっちゃありがたいです。ちなみにネオユニベースはギター用のチューニングになっているようです。)

 

そんなネオユニのベースですが、曲中では本来のベースではありえないような恐ろしい動きをします。

 

「え?下でうねってる低音ってベースじゃないの?」

 

と思いますよね?あれはシンセベースです。

いかにもベースのような立ち位置でウネウネしながら16分音符を刻みまくるあの音。

あれはシンセベースです。(2回目)

 

では本来のベースはどこを演奏しているのか・・・ ?

ベースの変態さがわかる2サビ部分を抜き出し、譜面に載っている各パートの動きをグラフに表してみました。

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グラフ上で赤い太線になっている部分がベースです。

なんという跳躍力でしょうか、このグラフがプロ野球の順位表だったらジャンプアップにも程があります。

ベース部分は2サビ前からサビにかけて2オクターブ上がっています。

もはやボーカルとどちらがメインなのかわからないくらいに歌い上げていますよね。

 

ちなみにこの高音ベース、通常の4弦・5弦では再現がほぼ不可能なので、コピーする際は1オクターブ下で演奏することをおすすめします。

(完成度がまるで違うのであまり好きではないですがこれは仕方ない。本来のキーは打ち込み音に忍び込ませるしか・・・)

 

しかしこの自由すぎるベースラインと低音でうねるシンセベースの対比が曲に立体感をもたらし、まるで超高層タワーの特別展望台から浮世離れした都市を見下ろすような”未来っぽさ”に繋がっているのではないかと私は思うのです。

 

参考:バンドスコア Clicked Singles Best 13

 

 

危ういけどまとまりがある、それが『NEO UNIVERSE

 

私が感じたネオユニの”未来っぽさ”の正体は、主に「不安定さ」から来ていました。

1つは曲の持つ音程の不安定さ、もう1つはベースラインのメロディ化による構成の不安定さが私の中の楽曲イメージに大きく関わっていたのです。

一方でどこかアナログっぽい音色や、低い位置でうねり続けるシンセベースによる「地盤の安定さ」もこの曲の魅力です。

 

キーやベースラインは危ういけれど、構成は安定している。

地に足ついていないけれど、着地する場所がある。

それが私がネオユニに惹かれ続ける最大の理由かもしれません。

 

ちなみにネオユニの歌詞のテーマは『25世紀の世界』。

つまり、25世紀にいる自分から見た「この世界」の歌なのです。

想像上の世界に生きる”現実”・・・果てしなくて魅力的です。

 

今回は『NEO UNIVERSE』の持つ未来感についてまとめてみましたが、正直これらの要素が必ずしも曲のイメージに直結しているとは言えないのも事実です。

記事を読んで「私はちょっと違うかも」「この部分、未来っぽくない?」と思う方もいるかもしれません。

そもそもネオユニに未来感を抱かない人だっているでしょう。

きっと100人に聴かせたら100通りの解釈が生まれるはずです。

 

あなたのネオユニ観、聞かせてください。